Jake Lah

DACポールの創設者であり、息子のヤンとともにヘリノックスを共同創設したジェイク・ラー。彼の卓越したエンジニアリング技術と尽きることのない探究心は、世界最高峰のアウトドアシェルターを支える静かな原動力となっている。

01. The King of Tents

ジェイク・ラーはテントに囲まれて育ちました。母親は韓国におけるガールスカウトの先駆者であり、ジェイクも一緒に夏のキャンプに参加していました。こうした幼少期の経験は「人とのつながり」と「探究心」の基盤となりました。創設者や革新者になるずっと前から、ジェイクのデザインへのアプローチは、彼のライフスタイルによって形作られていました。

人文学を学んだものの(工学ではなく)、ジェイクは「世界レベルのものをつくる」という挑戦に惹かれました。高強度アルミニウムに出会ったとき、彼は「これは極める価値のある素材だ」と直感しました。その情熱が、DAC Poles(동아알루미늄)の誕生につながります。この会社は、高性能のテントポール、家具フレーム、トレッキングポールを設計・製造することを専門としています。

イノベーションへの強いこだわりで知られるDACは、独自のアルミ合金 TH72M や、より持続可能なアルマイト処理技術を開発しました。ジェイクは、軽量かつ非常に強く、世界中のトップアウトドアブランドから信頼されるDACポールを完成させるまで、何年も改良を重ねました。

そして、チューブが完成したとき、彼はこう自問しました。

「次は何だ?」

その問いが彼をテントポールへと導き、最終的に現代のアウトドアシェルターを再定義することになったのです。

Nona Dome Tent

ヘリノックスの ノナドーム は、ザ・ノース・フェイスの "Dome 8" から着想を得ています。

Dome 8 は、九角形のフロアとセンターハブシステムを初めて採用したシェルターでした。ノナドームは、そのデザインをよりシンプルに進化させたモデルです。

Check

J.Para

大きな傘のような日除け。パラシュートほどの大きさがあり、わずかな風にも敏感に反応します。この安定性の課題を解決するのに3年以上を要しました。

そのスケールにもかかわらず、J.Para は軽量で、2人で30分以内に設営が可能です。
緊急時には迅速に運搬・設置でき、一時的な屋外シェルターとして機能します。
また、グループでの集まりやイベントに快適で心地よい空間を提供します。

Cosmos Dome Tent

コスモス・ドーム・テントは、もともと2008年の北京オリンピックのために開発され、聖火リレーの際にエベレストのベースキャンプで使用されました。

Geodesic Dome

最初のジオドームは、2002年の日韓ワールドカップのために制作されました。

ジェイクはこのイベントに特別な貢献をしたいと考えました。そこで、サッカーボールのような形のテントを作れるかどうかを確かめるために、紙を六角形に切り出すことから始めたのです。

このプロジェクトには、Mont-bellやVAUDEをはじめとする複数の有名ブランドが参加しました。

「アイデアは“必要”から始まる。それを形にすることこそが挑戦だ。」- Jake Lah

ジェイクは常に問い続けていました。

テントはどのように作られているのか、そしてどうすればもっと良くできるのか。

その姿勢が大きな突破口を生み出しました。

かさばるファミリーテントは、より軽量で扱いやすいシェルターを発想するきっかけとなり、さらにウルトラライト・バックパッカーたちの存在が彼を突き動かし、フェザーライト・ポール の開発へとつながりました。

その一つの革新が、テントの構造、生地、そして収納重量を根本から見直すきっかけとなったのです。

5kgあったテントは、強度を犠牲にすることなく2kgのシェルターへと進化し、性能と携帯性における新たな基準を打ち立てました。

02. Innovation

過酷なフィールドテストから工場の現場まで

DACでは品質を外部に委託することはありません。すべて自社で製造し、1グラム単位まで突き詰めて洗練させています。

ジェイクのリーダーシップのもと、精密さ、管理、そして誇りがあらゆる工程を支え、熟練の手によって細部まで意図を持って形づくられています。

だからこそ、DACポールは世界のトップアウトドアブランドに信頼され、ヘリノックスのファニチャーも、どこへ持って行ってもその性能を発揮するのです。

DAC Wind Lab

ジェイクは、過酷な環境下でのシェルター性能を検証するために、風洞ラボまで自ら設立しました。

彼が求めたのは、明確な答えでした。

「強風下でテントはどれほどの強度が必要か?」「正しく作られたかどうかはどう判断するか?」

DACの最大の強みのひとつは、自社工場を所有していることです。

これにより、品質、スピード、倫理において完全な管理が可能となります。
職人技の品質は常に一定に保たれます。

そして、製品に対しても人に対しても負う責任を、私たちは真剣に受け止めています。

「私たちの環境方針は、自然を工場に取り入れることから始まりました。」 - Jake Lah

ジェイクのビジョンは工場自体にも及びました。樹木を植え、天窓を設置し、灰色の工業空間を生き生きとした場へと変革したのです。

最大の挑戦はその後に訪れました。アルミニウムのアルマイト処理工程から有害化学物質を排除することです。DACは、手本となる道筋がない中で、より安全な代替方法の開発にほぼ10年を費やしました。

現在もその取り組みは続いており、(re) collection プロジェクトでは、工場のスクラップから再生されたアルミニウムを用いてポールを製造しています。

ジェイクにとって、真のサステナビリティとはスローガンではなく、静かで地道な努力によって新しい基準を生み出すことなのです。

03. 受け継がれる過去

「なぜ?」を問い続ける遺産

ジェイクは常に難しい問いを投げかけてきました。

「これはなぜ存在するのか?」「どうすればもっと良くできるか?」「次は何か?」

その考え方が、テントポールをひとつのムーブメントに変え、アウトドアギアをライフスタイルに昇華させました。

私たちの装備は、美しさだけでなく、構造的に堅牢で、テンションバランスが取れ、フィールドでの実績を証明された設計となっています。

フェザーライト・ポールはバックパッキングの常識を覆し、重量と性能における新たな基準を打ち立て、チェアワンはアウトドア用家具の常識を塗り替え、軽量で快適な座り心地をあらゆる冒険に届けました。

ジェイク・ラーの遺産は、単に製品に留まるものではありません。彼がDACポールやヘリノックスに根付かせたのは、エンジニアリング、倫理観、そして探究心の文化です。

業界が進化を続ける中で、彼の影響はあらゆるところに現れています。私たちが携行するギア、求める快適さ、そして「より良くできる」という信念のすべてに。

そして今も、ジェイク自身はその取り組みを「始まったばかり」と見ています。

「私はアウトドア業界で36年以上もの時間を過ごす機会に恵まれ、とても感謝しています。素晴らしい人々が本当にたくさんいます。」 — Jake Lah